今週はSIP Weekといって、通常授業ではなくビジネス倫理やイノベーションやリーダーシップについてちょっと考えようキャンペーン的な授業だけが行われる週。ちなみに毎セメやっている。
そこで、MBA一年生は必修でエンロン事件の全貌をドキュメントした映画を通して己の経験について考え、将来「あなたなら、どうする?」を突き詰める!という授業だったんだが、まずこの映画で描かれているエンロン事件の全貌が半端ない。こっからちょっとわざと崩し言葉で書きます。考察は映画と講演とウィキペディアちょこっと、という程度の知識なので勘弁して下さい。映画は Enron–The Smartest Guys in the Roomというやつです。観て損はありません。
スキャンダルの有名な部分は飛ばしなんだが、もう飛ばしとかいう問題じゃない気がする。例えば、オリンパスの飛ばし事件は記憶に新しいが、なんかもうこれは次元が違。すごい無理やりな説明をするなら、「カメラ売ってきた会社がカメラ売れなくなったから粉飾決算(英語ではcook the book)しました」というのと、「巨大企業が一応エネルギーやってるはずなんだけどふた開けてみればビジネスそのものに実態はなくて不正会計操作だけで超儲けてました」というのの違い。
あと普通にひどいのが、カリフォルニア電力危機への加担。電力の値段を釣り上げるために、カリフォルニア州の電力会社に電話一本で停電を起こさせたこと(エネルギートレーディングで儲けていることになっていたので相場をいじるインセンティブがある)。これが中国とかなら「なんつう仕事をしてるんだアホな電力会社の誰かがまた馬鹿やったんだろう」で誰もそこまで気にしない気がするが、ここは西暦2000年の米国カリフォルニアである。イチ企業の電話一本で、なんの関係もない御老人が真夏の盛りにクーラーなし生活を強いられたり、(原因は忘れたが)大規模な山火事が発生したりしてええはずがないやんか。その責任が全部知事に転嫁されて、その流れでシュワルツェネッガー氏が知事になって・・・という流れを、映画では「まるでB級映画のような悪夢」と表現していたが、まさに画面のこちらでは一緒に見ていた友達と3人でOrZ状態に。サブプライムでウォール・ストリート批判が高まった時、「Wall StばかりBailするな!Main St.はどうする!?」という論調が目立ったが、エンロンとかは一応Main St企業だよね。どっちがひどいとかそういう話をするつもりは毛頭ないが、消費者の生活に密着している分、Main St.企業が暴走したほうがなんか怖くないか?と一瞬悩んでしまった。
極めつけに「で、結局エンロンはどうやってお金儲けてるの?」という質問に誰もちゃんと答えられないんだけどスーツ着た偉そうなおっさんに「いや君はそんな質問をするなんて何もわかってないね」と質問したほうがアホ!みたいな方向に持っていくのが常だったので、そのうちアホだと思われるのが嫌で、誰も何も聞かなくなったらしい。 「監査のアンダーセンも承認したし、まあなんとかなってんだろ」とでも。おそらく相当の競争をくぐり抜けてきた頭いいビジネスマンたちが、である。ルーク氏とかに言わせれば、「だからこそ、失うものも多くてアホだと思われるのが怖くて考えること自体やめちゃったんだろ」ということなんだが。実際、刑務所にぶちこまれたのは会計士ではなく「なんとかなってんだろ」と言っていた人たちの上司なので、「わかった振り」は時にものすごく高く付くということか。
ディスカッションのあとにエンロン崩壊の一端を担った内部告発者のシャロン氏の実物(映画にも出てた)が来てくれて質問に答えてくれたんだが、いくつかなるほどと思うことを言っていたので以下引用:
「ちゃんとしたビジネスであるなら、5歳児でも理解できるように説明するのは可能なはず。その説明ができないビジネスは基本、怪しい」
「エンロンはすごく楽しい会社だった。 人事評価が完全成果主義だったから無能なボスはすぐ消えたし、「こういうプロジェクトがしたい」と手を挙げれば六ヶ月後には承認されて予算も降りた。ボーナスも評価が高ければ、年収分は軽くもらえたし。だから誰もそんな流れを壊したくなかったんだと思う」
「いつも儲けたお金の量の話ばかりしている会社で働くのはやめた方がいい。絶対に人生損するから」
講演のあと、隣りに座ってたルーク氏に「そもそも本当にお金儲けてるわけじゃなかったのに、人事評価が完全成果主義なのってどゆこと?何で評価してたわけ?やっぱFake revenueかな?」となんとなく聞いてみたらにやにやと「だから頭いい人たちって馬鹿なのさ」と意味深に返された。「だって考えないんだもん」
そもそも、人間の脳は40Wの電球並のエネルギー効率で、暗めの裸電球と同じく頼りない。だからデザイン上、考えないためのショートカットをたくさん備えている。頭いい人たちが馬鹿というよりは人間は基本的にどっちかっていたらアホなところが多いのでそれを頭の片隅に入れてリーダーシップ取ろうねというのが主なtake awayなんだろう。
いろいろ消化できてない部分も多いが、強制終了!
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