アキラ君:寧々さん!寧々さん!大変です!
寧々:どうした?血相変えて。
アキラ君:ハーバード大学のウェブサイトで学費を調べたんですけど、年間で寮費とか食費とか入れると500万以上かかることがわかりました!僕、3人兄弟の長男で、浪人すらできないのにこんなの絶対無理です!やっぱりアメリカ進学は諦めて東大に行きます!
寧々:ちょっと落ち着きたまえ。そこで諦めてたら私も最初からアメリカ受験なんかしなかったわ!
アキラ君:え、お金で諦めなくていいんですか?アメリカ進学。だって、こんなに高いんですよ!
寧々:それは、君が値札を見るからだ!Usnewsランキングのハーバードのページをよおーく見てみたまえ。Financial Aidという項目だ。
アキラ君:えっと、60%以上がFinancial Aidを受け取っている・・・と。これはどういうことですか?
寧々:値札通り全額払ってる人はハーバード生全体で4割もいないってこと。
アキラ君:えー、じゃ、全額払わなくてもいいんですか?
寧々:そういうことよ。はあ…調べて調べてお金で諦める人が日本では特に多いのでこの項目はようく聴くことだな。アメリカの私立のお金持ちな大学は、Financial Aid(助成金)といって、値札通り学費などを全額払わなくても全く構わないよ、という制度が存在する。むしろ、全額払っている人が珍しいくらいに。この前、「元ホームレスだったけどハーバード合格したよ」っていう女の子が本出してたけど、全額払えるわけないだろ。
アキラ君:そ、そうですね…。
寧々:うちだって、Duke大学には奨学金付きで合格して、4年間通して、全学費の1/3くらいしか払ってない(もちろん返済義務もなし)。そうすると、日本の私立大学に行くのとほぼ同じくらいの値段になるぞ。
アキラ君:えー、そんなんでいいんですか?
寧々:まず、このFinancial Aidという制度だが、Need BasedとNeed Blindという2つの場合が存在する。Need Basedは、簡単に言えば「うちにお金がありません」ということを証明すれば合格基準を満たす場合、奨学金を貰える制度。ハーバードのようにNeed Blindの場合は、特に証明しなくても学費を値切る事ができる大変太っ腹な制度だ。
アキラ君:そんな太っ腹でいいんですか?
寧々:ハーバードだからな(笑)。ただーし!我々のように海外留学生の場合は、「Financial Aidは国内生のためのものなので、全額払えないって言うなら合格率下がるぞ」と言ってくる学校もたくさんある。
というかそれが主流だ。私が総合大学はDuke大学にしか受からなかったことも、学費を値切ろうとしたからだと思う。U-Penn(IvyLeagueのひとつ)なんかは、「本当にFinancial Aidいるんですね?もしほんとはいらないって場合はこの葉書を投函してね」みたいな葉書を送ってよこした。
はっきり言おう。全額払える子のほうが、合格率は高い。
アキラ君:えー(涙目)。じゃあ、やっぱり諦めるしかないのかな。
寧々:諦めが早いのは褒められたことじゃないな。前にも言ったように、お金で諦めてたら今の私は存在しない。奨学金を狙うんだ!そして、作戦としては多くの大学に出願したほうが確率は上がる。
アキラ君:はい。でも、返済義務のないものってあるんですか?
寧々:そうか、日本の奨学金ってほぼ返済するんだったな。
まず、返済義務のない奨学金を貰う前提で行こう。学校から貰う Financial Aidは基本返済義務はない。Loanと名のつくものは、当然あるが。
学校以外から日本人の学生がもらえる奨学金で、お勧めなのはグルー・バンクロフト基金とフリーマン奨学金だ。両方共、全く返済義務はない。
アキラ君:学校も、結構太っ腹なところもあるんですね。お、グルー・バンクロフト基金すごい!毎年250万円ももらえる枠が2つで、100万円が3つだ。
寧々:普通に日本の私立大学へ通わせてくれる予算があったら、それくらい貰えば足りるお家もあるだろう。
アキラ君:そうですね!最近の私立も200万円くらいしますし。でも、僕は実は3人兄弟の長男で、浪人も私立も駄目っぽいんですよ。どうしよう、足りない!
寧々:慌てるでない。私のネイティブ脳の生徒でも、当時グルー・バンクロフト基金に合格した子たちでも、君よりずっと厳しい家庭環境の子がたくさんいたけど、お金で諦めてなかったぞ。グルーと各学校からのお金の組み合わせで結局日本の国立くらいしか払ってないケース多し。
アキラ君:そうですかね、うーん。確かに、これくらい貰えたら、僕でも行ける気がする。でも、競争率も高いですよね、これ。こんなにたくさんお金がもらえる奨学金ですし。
寧々:昨年(2013年)の応募者の総数を見よ。
アキラ君:えええええーーー!!全国でたったの54人!?
寧々:だからって当然油断は出来ないけれどね。ライバルはこの情報過少事態をくぐり抜けた全国のツワモノたちだから。けど、これが例えば中韓の奨学金なら、全国からン万単位のライバルが集まるだろうなあ。
アキラ君:つまり、集まってる人の凄さはまあその通りなんだけど、倍率が低くてラッキー、ってことですね。どこまでラッキーかはともかく…。
寧々:まあね。私のお手本にしていた人は、MIT志望だったからそもそもこの奨学金は考えていなかったらしいし、私がこの奨学金のことを聴いたのも、フェリスのひとつ上の先輩が同じくアメリカ志望で、グルー奨学金とフリーマン奨学金にダブルで合格していたからなのよ。
アキラ君:それってつまり…
寧々:そう、私がこれを知り得たのは完全にラッキーだったってこと。そして、情報格差は結構深刻だってこと。グルーのファイナリストでもフリーマンを知らなかったり、逆もしかりだったり。
アキラ君:なんでなんでしょうね…。
寧々:マーケティングじゃないのかな?まあ、そういうわけで全国の米国大学受験生はこのページを見よう。(宣伝)
アキラ君:ふむふむ。フリーマン奨学金は、学費が全額免除になっておいしいけれど、Wesleyan大学一択なんですね。
寧々:Wesleyan大学は素晴らしいので是非頑張って。
アキラ君:こう言っちゃなんなのですが、日本ではあまり聴いたことが…。
寧々:また知名度かね……日本での知名度を基準にしていたら、ハーバードとUCLAとMITくらいしか大学じゃなくなっちゃうよ?Ivy Leagueさえ全部言える人はすごい稀だよ?私は別にランキング至上主義者じゃないけれど、とりあえずこのページを見たまえ。
アキラ君:あーすごい!TOP10なんだ!すごいんですね、Wesleyan大学。
寧々:…ふう。
アキラ君:そんな、全身で脱力しないでくださいよ!
寧々:……リベラルアーツ大学と知名度と将来の展望については、また別の機会にじっくり語ることにして、ここではUS News Rankingの総合大学及びリベラルアーツ大学のそれぞれのベスト35くらいを「名門大学」と超ざっくりに位置づけるね。
アキラ君:そんなにたくさんあるんですか!?
寧々:まあ脱線すると、それが米大学のいいところでさ、日本と違って超良い大学の数がすごく多い。だから、まあたまに聴く話だけど、学部とか教育の中身は他の大学に興味津々なのに、成績がすごくいいから「東大行かないともったいない!」って仕方なく東大行くケースはあまりないよ。ハーバード受かったって蹴る人たくさんいるし。
アキラ君:は、ハーバード蹴る人いるんですか?
寧々:うじゃうじゃいるし、タイガー・マザーでもない限りもったいないとは言わない。つまり、超良い大学がたくさんある状態ってのは、自分の価値観や個性に合った大学を割りと少ないノイズで決められるってことなんだ。まあ、奨学金の有無で決める人もいるが。よし、奨学金に話を戻そう。
アキラ君:フリーマン奨学金でしたね。Wesleyan大学がすごく面白そうなのはウェブサイトでちゃんと確認しました!ここの大学の学費が全免になるんですね!
寧々:生活費とか寮費はかかるけどね。けれど、Wesleyan大学はリベラルアーツ大学なので、グルー基金との併用ができる。つまり…
アキラ君:なんと!学費が300万ちょい全免除で、残りの寮費とか食費が200万ちょいだから、グルーを高位合格できたら、ほとんど全部免除ってことに…!!
寧々:はい、正解。狭き門と言えなくもないけれど、いい話だろう?
アキラ君:なんだか希望が湧いてきました!僕みたいな、特に派手な経歴がない高校生でも、合格してほぼお金をかけずにアメリカの名門大学に行ける可能性はあるんですよね?
寧々:そりゃあるさ。笑。派手な経歴はあったほうが有利には違いないが、君は同年代の中では十分に優秀だし、学校内で責任ある立場にもいたことがあるし、可能性は十分ある。これもまた別の回で話そう。むしろ、前回話した点数の問題をクリアすれば、道はだいぶ拓けるんじゃないかと。
アキラ君:なるほど。
寧々:まあでも、フリーマン奨学金の合格者は1年に1人なので、もっと汎用性のある話をしようか。グルー基金の隠れた利益について。
アキラ君:お金がもらえるだけじゃなくて?
寧々:だけじゃなくて、この基金は戦後からずーと優秀な日本の学生を米リベラルアーツ大学に送り続けた実績があるので、当然学校からの信頼は厚い。なので、例えお金がもらえない合格者になったとしても(毎年10人-20人程度いる)、希望のリベラルアーツ大学への合格率は上がるし、Financial Aidを貰える可能性が高くなるんだ。グルーの推薦があれば、学費を減免すると手放しで宣言している学校もあるくらいにね。
アキラ君:それはすごいですね!つまり、その中に入ればリベラルアーツ大学への合格率や奨学金貰い率が一気に高まる、と。
寧々:そゆこと。10年前の話で恐縮だけど、当時最終選考まで残った子も、1次は通過したけれど2次は不合格だった子も、名門リベラルアーツ大学への進学を果たしている。何人かはFinancial Aidつきで。調べてみたら近年でもその傾向は変わっていないらしい。
大体、リベラルアーツ大学は、海外からの学生にも太っ腹にFinancial Aidを出す傾向が強い。結論から言うと教育のレベルや学部生のレベルも、Ivy Leagueに決して遜色ないし、知名度がないのも日本の茶の間だけで、グローバル就活マーケットでは引く手あまた。なので、海外に出たいけれどお金に自信がない優秀な中高生には強くお勧めします(真顔)。
アキラ君:な、なるほど。これはグルー基金、絶対受けなきゃですね!リベラルアーツのことといい、もっと調べなきゃな。
寧々:そこはまた詳しく話すけど、自分のやりたいことも固まってなくて、学校の名前も知らん人は、まずUS News Rankingをぼうっと眺めればいいんじゃないのかな。知識はつくよ、最低でも。
アキラ君:はい!なんか楽しいですね、これ。学校がたくさんあるからどれかに行けるかなーなんて思ったりして。
寧々:そうやってニヤニヤする時間、大事よ。中学受験経験者ならわかるけど、あの学校偏差値分布表眺めるのと同じ感覚。情報量はだいぶ違うけど。
アキラ君:あれ、でもロックがかかってて見えない情報もあるや。
寧々:各大学の合格者SATの点数とか、そういうのは有料ね。あと、「どの大学がどの程度海外の学生にFinancial Aidを出しているか」が公開されているので、参考にしよう。29ドルの一回払いだし。総合大学にたまにあることだが、海外の学生には決してFinancial Aidを出さない学校もあり、そういうところは受けるだけ無駄だから下調べは重要だよね。
あ、グルーの補足だけれど、書類段階で足を切られぬよう、前回言った試験の点数は完璧じゃなくてもいいから書類締め切りの9月までには揃えようね。
アキラ君:はい!頑張ります!あ、そうだ!あと、コミュニティ・カレッジってあるじゃないですか?あれはすごく学費が安くて、年8万円のもあったり、UCLAとかに編入できるって聴いたんですけど、そっちはどうですか?
寧々:そっちはねー。うーん。
アキラ君:え、駄目ですかね?
寧々:駄目じゃない。決して駄目じゃない。ドラマチックな成功例もあるし。
けど、このコミュニティ・カレッジ(以下、コミカレ)→UCルートって安くてお得に見えて、リスクが結構あるんだよな。
アキラ君:え、どんなですか?コミカレは学費も安いし、勉强も日本で優秀なら難しくないし、そこでいい成績を取れたら、UCに限らずその州のいい州立大学に編入できるって、結構いい話に聞こえるんですが。
寧々:そうには違いないのだが、おおまかにいうとリスクが3つくらいある。お金の話からは脱線になるけど手早く済ませるね。私が考える、コミカレ→名門州立のリスクは、以下。
1. お金
2. QOL
3. 合格率
アキラ君:お金は、安いんじゃないんですか?最初の2年、コミカレだし。
寧々:確かにコミカレの学費は安い。が、後半の2年は海外生として州外率で学費払わなきゃだよ?
アキラ君:州外?
寧々:そう。州立大学は州民の税金で成り立っているので、当然州民が優遇される。学費も安くなる。だから、優秀かつ裕福でないアメリカの学生は多くがトップの州立大学に行くのだが、州外から来る学生となると話は違う。UCバークレーは例えば、非州民の学生(親がCalifornia納税者でない学生)の学費に220万円近く上乗せしている。
アキラ君:う、それは…!日本の私立と国立以上に違うじゃないですか。同じ学校に通うのに!
寧々:まあ、親たちは税金を払っているからフェアだって意見もある。なので、色々加算すると、後半2年にかかる学費や諸経費が私立大学のそれと変わらないケースも多々あり、また間違ってもFinancial Aidは出ないので(当然納税者の学生に回される)、その2年分の学費はがっつりかかる。
アキラ君:グルーが取れたり、リベラルアーツ大学でFinancial Aidもらったりした方が資金的にいい、ってこともあるんですね。
寧々:そういうこと。2と3については別の回で詳しく行きたいけど、端的に言えば、純ジャパが渡米前勉强してない状態で行って本当に合格する可能性が高くないってことと、価値観の問題だけど、2年間のカレッジライフをコミカレで過ごすことは熟慮が必要だということをここではいっとく。(例えばどうしてもUCバークレー/UCLAに行きたいけど時間・金が足りず、他の大学は行きたくない!とか)。
当然、上手く行けばすごくいいオプションではあるけれどね。
アキラ君:ふむ。色々考えないとですね。けど、なんだか希望が湧いてきました。お金で諦めなくてもアメリカの名門大学に行けるんですね!
本日も最高に濃ゆい話をありがとうございます!なんだか情報がたくさんありすぎて目が回るのですが…。
寧々:そんなあなたのために!本日の情報をざっくりまとめたピラミッド型の早見表を作ってみたよ。
お金で諦めんなってのはその通りで、よくアメリカの大学は学費が目玉が飛び出るほど高いから無理って最初から投げ出す声(たまに何故か「こっちに資金がないのわかってて薦めるなんて不謹慎だゴルァ」とか逆切れる声も)を聴くし、それも一部では事実には違いないけれど、決して挑戦すらしない理由にはならないと思うのよね。
なので、これでもか!とわかり易さを追求しました。どうぞご参考に。
けれど、この図がカバーしきれない特殊な情報やシチュエーションも勿論あるので、「うちはどうなんだ!?」と気になる場合はコメント欄からお問い合わせ下さい。
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