独断と偏見に満ちた米国事情~勉強編I

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 独断と偏見に満ちた米国事情~勉強編I
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed
独断と偏見に満ちた米国事情~勉強編Iall over the place


読者の皆さん、こんばんは。
今回は、アメリカ大学の生活・勉強事情について語ってみたいと思う。

アメリカの大学は、地元通いでない場合、ほとんどが寮生活になる。17、8ではじめて親元を離れ、学生寮で生活を始める大学生がほとんどだ(ボーディングスクールと呼ばれる全寮制の私立に通うのも結構いるが)。その場合、まぁ想像つくと思うが、親御さん達も結構みんな心配なのだ。ちゃんと栄養バランス考えてご飯食べてるかな、とか。勉強ついていけてるかな、とか(実際、ついていけないことも多いが、それは高校の地域格差によるものが大きい。だが、成績は就職や大学院進学で非常に大事な要素なので、親御さんは成績を結構気にする)。変な友達とつるんでないかな、とか。馬鹿なことやってないかな、とか…。

そんな親御さんの心配がなんとなくわかってしまう手紙がある。大学1年生のシャロンちゃんが両親にあてた手紙―(下の方に日本語訳あり)

Dear Mom & Dad

Since I left for college I have been remiss in writing and I am sorry for my thoughtlessness in not having written before. I will bring you up to date now, but before you read on, please sit down. You are not to read any further unless you are sitting down, okay?

Well, then, I am getting along pretty well now. The skull fracture and the concussion I got when I jumped out the window of my dormitory when it caught fire shortly after my arrival here is pretty well healed now. I only spent two weeks in the hospital and now I can see almost normally and only get those sick headaches once a day. Fortunately, the fire in the dormitory, and my jump, was witnessed by an attendant at the gas station near the dorm, and he was the one who called the Fire Department and the Ambulance. He also visited me in the hospital and since I had nowhere to live because of the burnt out dormitory, he was kind enough to invite me to share his apartment with him. It’s really a basement room, but it’s kind of cute. He is a very kind boy and we have fallen deeply in love and are planning to get married. We haven’t got the exact date yet, but it will be before my pregnancy begins to show.

Yes Mum & Dad, I am pregnant. I know how much you are looking forward to being grandparents and I know you will welcome the baby and give it the same love and devotion and tender care you gave me when I was a child. The reason for the delay in our marriage is that my boyfriend has a minor infection which prevents us from passing our pre-marital blood tests and I carelessly caught it from him.

Now that I have brought you up to date, I want to tell you that there was no dormitory fire, I did not have concussion or skull fracture, I was not in hospital, I am not pregnant, I am not engaged, I am not infected and there is no boyfriend. However, I am getting a “D” in American History, and an “F” in Chemistry and I want you to see those marks in their proper perspective.

Your loving daughter

Sharon

 

日本語訳

親愛なるママとパパへ

お手紙遅れてごめんなさいね。大学に行ってから、文章を書く機会もめっきり少なくなってしまいましたもので、お手紙を書くなんてこと、しばらく思いつきませんでした。こちらの近況を報告したいと思います。けれど、ひとつだけお願い。このお手紙は、必ず座って読んで下さい。座る前にこの先を読んじゃだめよ?

ちゃんと座りましたね?

私はとても元気にやってます。この前、学生寮が火事になって、窓から飛び降りた時に頭を打ったんですが、その時の頭蓋骨のヒビからも脳震盪からも、だいぶ回復出来てます。たった2週間の入院で済みましたし、1日1回くらい吐き気を伴う頭痛がするだけなので、心配しないで下さいね。学生寮の火事と私の飛び降りの一部始終は、大学の側のガソリンスタンドの店員が目撃していて、その人が親切にも、消防車と救急車を呼んでくれたんです。彼は、私が入院しているときもお見舞いに来てくれて、学生寮から焼けだされて住むところのない私を、自分のアパートに迎え入れてくれたんです。正確には、地下室の一角なんですけど、それも結構、情緒あるのよ。彼はとても優しい人で、私達はすぐ深く愛しあうようになりまして、もうすぐ結婚することにしましたの。まだ日取りは決めかねているんですが、私のお腹が目立つ前には式を挙げたいと考えてます。

そうなんです、私のお腹には命が宿ってます。ママもパパも、おじいちゃんおばあちゃんになるのが待ちきれないのが手に取るようにわかります。私にしてくれたのと同じく、この子も愛情深く献身的に育ててくれるものと信じてるわ!結婚式の日取りがなかなか決まらないのは、婚約者の彼が、まあ、たいしたことないんですけど、性感染症に罹ってまして、結婚前の血液検査にひっかかりそうだからです。私もうっかり移されてしまったんですけど、すぐ治るので大丈夫よ。

さて、私の近況報告は以上です。本当のことを白状しますと、学生寮に火事などなく、私の頭蓋骨は無事で、入院なんかしてないの。もちろん妊娠も、婚約も、性感染症も彼氏もなにもかも嘘です。けれど、今度のアメリカ史のテストでD、化学でFを取ってしまいました。ただ、パパとママにこの成績のことを前向きに受け止めて欲しかったんです。

娘より、愛をこめて

しゃろん

なんじゃそりゃあああああ!!!

という叫びが聞こえてきそうなんだが、この文章は、れっきとしたDuke University心理学授業の教材であり、この手紙は、出典不明だが(単に忘れただけかも?)、有名かつ古典的かつ、卑近な心理戦の例だ。最後まで読んで、「…なんだそんなことか」とあなたに思わせたら、しゃろんの心理戦大勝利である。

別に私がとった授業では特に出て来なかったが、大学でFreshmanの時、友達のMusicが夜ののんびり勉強タイムにやたら興奮しながらやってきて、「これ読んでみw」とにやにや渡してくれた時の衝撃が忘れられない。

何が言いたいのかというと、アメリカの学部の授業は基本的に面白いってことだ。少なくとも、そうなるように頑張って工夫されている。なぜかというと、アメリカ人はこちらが驚くほど、「つまらない授業」に対する耐性がない。私が普通に「ああ今日も新しいことを学べた」と新鮮な気持ちで教室を出ても、友達などは隣で「あー、今日のあれ、超つまんなかった!あんな情報、本でも読めるしネットでも転がってるっての!教授はスライド棒読みだし!」なんてぼやいてるのはザラである。

時間中、100%意識を惹きつけられ、ぼーっとする暇など一瞬もなく知的好奇心(あるいは娯楽的興味)を掻き立てられ、理想を言えば学生側からもインプットできるような授業くらいでないと、彼らを面白い、とは言わせられないのだ。

さらに、ratemyprofessor.comと言って、教授の授業の質を5段階評価する学生用サイトというのもあって(全米、全カナダのあらゆる高校大学をカバーしている)、大学生が授業を取るときはたいていこのサイトの教授レビューを参考にするため、授業がつまらないのにあぐらをかいていると、下手したら教室に閑古鳥が鳴く。大きめの大学の数学とか物理とか経済とか、黙ってても誰もが一定数取る授業ならいざ知らず、ほとんどの授業は、学生の興味を掻き立てるように工夫されているのだ。少人数で学部しかないリベラルアーツ大学などは、教授=学部生を教えるもの、なのでその傾向はさらに顕著なはずである。

一応このブログも、日本の中高生の海外進学を支援しているので、これからはアメリカの大学の微妙な事情、面白いと思った授業を記憶ベースで辿っていきます…反響次第で。

そんなDukeの授業で、TOP5に入るほど面白い授業をしてくれたのが、行動経済学のDan Ariely教授だ。幸いにも、彼はベストセラー本を書いていて、私が説明するよりもこっちを読んだほうが早いので、是非お勧めしたい。世の中を見る目が、少し変わるかも知れない。

Predictably Irrational, Revised Intl

予想どおりに不合理[増補版]


Leave a Reply

*
= 3 + 1