Daily Archives: 2月 14th, 2013
憎しみから始まる社会起業のススメ
そう、愛からでも勇気からでも希望からでもなく。
現在取っている楽しい授業のひとつに、「社会起業のススメ」というプロジェクトベースのものがあるんだが、そこで私の米教育格差是正に営利企業のサービスモデルを持ち込みたいという案をピッチしたところ、意外と教授受けがよく、「これは有望なのでぜひ頑張ってやってみてほしい」とのこと。貧しいために(といっても明日の食事に困るような貧しさではたぶんない)かなり劣悪な学校教育環境から脱出できず、親も教育に関心があるのにオプションがない状態。劣悪な公立学校では生徒のほとんどが学年より2-3年学力で遅れを取っている状態。それも、本来の知力に関わらず。その格差を是正するためにKIPPやTFAが頑張っているけれど、明確なソリューションは提示できていない状態なのだ。
親からすれば、KIPPのようなチャータースクールは倍率が5-10倍の抽選をくぐり抜けなければ入れないし、私立は総じて年間200万円ほどするので全く払える見込みが無い。住む地域を変えるという選択肢も、貧しい都市生活者にありがちな、ギリギリの雇用状態では難しい。このまま子供を公立に入れたままにしても、最悪で卒業率が10%の高校に行かざるを得なくなり、良い教育を受け大学へ行く機会は絶望的となる。そして、所得格差が固定される。親がどんなに頑張っても、妙なプライシングと硬直した需要過多なシステムのせいで、全て徒労に終わる。
この腹立たしい状態にソリューションをとまあ、現在パートナー集めたり試行錯誤したりしているところなんだが、「カスタマーの定義とビジネスの理由が明確でいいね」とふとした拍子でクラスメイトのK氏に言われた。彼は私と違ってガチの起業経験者で、韓国エリートがアフリカビジネスマンに華麗に転身、現在進行形でナイジェリアにスタートアップ会社を持つ。K氏はというと、「事業に『社会のために』みたいなレッテルをつけたいんだが、どうも上手いこといかない。どうやら僕は発想が社会起業とか向いていないのかもしれないんだな」とぼやいていた。
「そんなことはないと思うが、とりあえず超そういうことに関心がある人と組んだら自然とその回路をビジネスに組み入れられるんじゃないのかな?」
「うん、同じ事を他のVCのやつらに何度か言われたんだけど、でも僕自身がそういう考え方を身につけたいんだよね。無理かな?」
「そうねえ」ちょっと考えて、私は気づいたのだ。「ああ、それはもしかして善意とか同情とか博愛とかの立場から出発してるからちょっと自分でもうそ臭く感じてるんじゃない?」
「そう!それなんだよ」とK氏。そこらへんぎこちないって自分でも思うんだよ」
「それは出発点がソフトすぎるからよ」私は今腑に落ちたばかりのことを口に出した。「私は例えば、教育事業を通して選択肢がない状態の親子をなんとかしたい。けれど、その出発点は決して綺麗な感情じゃない。私は、心の底からどす黒いレベルに理不尽な教員とか劣悪な教育が憎い。それこそ子供の頃からそういうのに煮え湯を飲まされたことが何度かあり、親が進学塾に入れてくれたから自由と素晴らしい中高時代が手に入ったけど、その選択肢がうちの両親になかったら、と思うと、公立の抑圧的なシステムに対する怒りや憎しみが今でもいくらでも湧いてくる。アメリカの親御さんの、この「選択肢がない」という絶望がありありと想像できる。だから、私を今駆り立てているのは自己犠牲精神なんぞではなく、純粋な怒りと憎しみと少々の破壊欲なのよ。
なので、K氏もさ、ちょっと今までの人生振り返ってみて、世の中の理不尽のせいであなたの中で最も強く印象に残った負の感情を掘り返したら、すごい社会起業のモチベにつながるかもよ?」
と語ってしまったんだが、K氏はものすごく納得して帰っていった。ちょっと今夜自分の人生について考えてみる!と言い残しw
起業のモチベが夢や希望でなく、夢や希望が理不尽に破壊されていることに対する憎しみと破壊欲である、と定義するほうが、どうしても自分にはしっくりくる。とか考えているそばから、思わぬ方向から同じ考えを持つ人に出会ったり、起業を決めた途端から人生の動くペースが速くて楽しい。けど、今までのレール人生のぬるま湯のせいか、ちょっと心が付いて行くのにぜえぜえ状態なので、そこは調整剃る必要がありそうなのが、当面の課題。
頑張ります。
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