初著書が出版されました&近況報告

皆様、お久しぶりです。

2012年のMBA入学時くらいから本格的に書き始めたものの、もはや更新停止して廃墟と化したこのブログに、未だに500名以上の読者が定期的に通ってきているというデータが手に入り、ご挨拶しようと思いました。MBA受験の話とかMITの話とかのためなんだろうけど、それにしてもちょっとありがたい(情報としてはもうかなり古いはずなので申し訳ない限りだが)。

実は、今も文章はFacebook公式ページ(https://www.facebook.com/ningshirakawa/)やMedium(https://medium.com/@ningshirakawa)に定期的に挙げているので、「今この人どうしてんだろ」って気になったら覗いてみてください。SF近く在住でありつつ、日米を行き来する教育起業家になりました。もうかれこれ会社は5年目です。タクトピアっていう会社です。日本の教育を改造してます。楽しいです。

あと、初めての本、『英語ネイティブ脳みそのつくりかた』(大和書房)が本日出版されました。25日正午までにポチるとAmazon特典がついてきます。

田村耕太郎さんが載せてくれた日経ビジネスの記事で紹介した「ネイティブ脳」で日本の英語教育のちゃぶ台返しをやろうと決めてから、実に6年(!)も経っているんですけど、やっと本になりました。当時高校生だった教え子たちはもう就職しちゃいました。

私が今まで、独学で英語をやり、MITで学んだものの作り方と学び方をまぶし、Amandaという素敵な天才キャラにインスパイアされ、その後タクトピアを立ち上げて累計1万5000人以上の中高大学生を心から国際化した軌跡と、誰でも実践可能なメソッドがゴリゴリモツ煮込み仕様で詰め込まれています。

廃墟化したこのページをご愛顧いただき、感謝です。

それでは、次の媒体で会えますことを。

白川寧々

米名門大学へ進学したいけれど情報がない高校生と白川寧々の対談 お金編

米大学学資相談チャート


アキラ君:寧々さん!寧々さん!大変です!

寧々:どうした?血相変えて。

アキラ君:ハーバード大学のウェブサイトで学費を調べたんですけど、年間で寮費とか食費とか入れると500万以上かかることがわかりました!僕、3人兄弟の長男で、浪人すらできないのにこんなの絶対無理です!やっぱりアメリカ進学は諦めて東大に行きます!

寧々:ちょっと落ち着きたまえ。そこで諦めてたら私も最初からアメリカ受験なんかしなかったわ!

アキラ君:え、お金で諦めなくていいんですか?アメリカ進学。だって、こんなに高いんですよ!

寧々:それは、君が値札を見るからだ!Usnewsランキングのハーバードのページをよおーく見てみたまえ。Financial Aidという項目だ。

アキラ君:えっと、60%以上がFinancial Aidを受け取っている・・・と。これはどういうことですか?

寧々:値札通り全額払ってる人はハーバード生全体で4割もいないってこと。

アキラ君:えー、じゃ、全額払わなくてもいいんですか?

寧々:そういうことよ。はあ…調べて調べてお金で諦める人が日本では特に多いのでこの項目はようく聴くことだな。アメリカの私立のお金持ちな大学は、Financial Aid(助成金)といって、値札通り学費などを全額払わなくても全く構わないよ、という制度が存在する。むしろ、全額払っている人が珍しいくらいに。この前、「元ホームレスだったけどハーバード合格したよ」っていう女の子が本出してたけど、全額払えるわけないだろ。

アキラ君:そ、そうですね…。

寧々:うちだって、Duke大学には奨学金付きで合格して、4年間通して、全学費の1/3くらいしか払ってない(もちろん返済義務もなし)。そうすると、日本の私立大学に行くのとほぼ同じくらいの値段になるぞ。

アキラ君:えー、そんなんでいいんですか?

寧々:まず、このFinancial Aidという制度だが、Need BasedとNeed Blindという2つの場合が存在する。Need Basedは、簡単に言えば「うちにお金がありません」ということを証明すれば合格基準を満たす場合、奨学金を貰える制度。ハーバードのようにNeed Blindの場合は、特に証明しなくても学費を値切る事ができる大変太っ腹な制度だ。

アキラ君:そんな太っ腹でいいんですか?

寧々:ハーバードだからな(笑)。ただーし!我々のように海外留学生の場合は、「Financial Aidは国内生のためのものなので、全額払えないって言うなら合格率下がるぞ」と言ってくる学校もたくさんある。

というかそれが主流だ。私が総合大学はDuke大学にしか受からなかったことも、学費を値切ろうとしたからだと思う。U-Penn(IvyLeagueのひとつ)なんかは、「本当にFinancial Aidいるんですね?もしほんとはいらないって場合はこの葉書を投函してね」みたいな葉書を送ってよこした。

はっきり言おう。全額払える子のほうが、合格率は高い。

アキラ君:えー(涙目)。じゃあ、やっぱり諦めるしかないのかな。

寧々:諦めが早いのは褒められたことじゃないな。前にも言ったように、お金で諦めてたら今の私は存在しない。奨学金を狙うんだ!そして、作戦としては多くの大学に出願したほうが確率は上がる。

アキラ君:はい。でも、返済義務のないものってあるんですか?

寧々:そうか、日本の奨学金ってほぼ返済するんだったな。

まず、返済義務のない奨学金を貰う前提で行こう。学校から貰う Financial Aidは基本返済義務はない。Loanと名のつくものは、当然あるが。
学校以外から日本人の学生がもらえる奨学金で、お勧めなのはグルー・バンクロフト基金フリーマン奨学金だ。両方共、全く返済義務はない。

アキラ君:学校も、結構太っ腹なところもあるんですね。お、グルー・バンクロフト基金すごい!毎年250万円ももらえる枠が2つで、100万円が3つだ。

寧々:普通に日本の私立大学へ通わせてくれる予算があったら、それくらい貰えば足りるお家もあるだろう。

アキラ君:そうですね!最近の私立も200万円くらいしますし。でも、僕は実は3人兄弟の長男で、浪人も私立も駄目っぽいんですよ。どうしよう、足りない!

寧々:慌てるでない。私のネイティブ脳の生徒でも、当時グルー・バンクロフト基金に合格した子たちでも、君よりずっと厳しい家庭環境の子がたくさんいたけど、お金で諦めてなかったぞ。グルーと各学校からのお金の組み合わせで結局日本の国立くらいしか払ってないケース多し。

アキラ君:そうですかね、うーん。確かに、これくらい貰えたら、僕でも行ける気がする。でも、競争率も高いですよね、これ。こんなにたくさんお金がもらえる奨学金ですし。

寧々:昨年(2013年)の応募者の総数を見よ。

アキラ君:えええええーーー!!全国でたったの54人!?

寧々:だからって当然油断は出来ないけれどね。ライバルはこの情報過少事態をくぐり抜けた全国のツワモノたちだから。けど、これが例えば中韓の奨学金なら、全国からン万単位のライバルが集まるだろうなあ。

アキラ君:つまり、集まってる人の凄さはまあその通りなんだけど、倍率が低くてラッキー、ってことですね。どこまでラッキーかはともかく…。

寧々:まあね。私のお手本にしていた人は、MIT志望だったからそもそもこの奨学金は考えていなかったらしいし、私がこの奨学金のことを聴いたのも、フェリスのひとつ上の先輩が同じくアメリカ志望で、グルー奨学金とフリーマン奨学金にダブルで合格していたからなのよ。

アキラ君:それってつまり…

寧々:そう、私がこれを知り得たのは完全にラッキーだったってこと。そして、情報格差は結構深刻だってこと。グルーのファイナリストでもフリーマンを知らなかったり、逆もしかりだったり。

アキラ君:なんでなんでしょうね…。

寧々:マーケティングじゃないのかな?まあ、そういうわけで全国の米国大学受験生はこのページを見よう。(宣伝)

アキラ君:ふむふむ。フリーマン奨学金は、学費が全額免除になっておいしいけれど、Wesleyan大学一択なんですね。

寧々:Wesleyan大学は素晴らしいので是非頑張って。

アキラ君:こう言っちゃなんなのですが、日本ではあまり聴いたことが…。

寧々:また知名度かね……日本での知名度を基準にしていたら、ハーバードとUCLAとMITくらいしか大学じゃなくなっちゃうよ?Ivy Leagueさえ全部言える人はすごい稀だよ?私は別にランキング至上主義者じゃないけれど、とりあえずこのページを見たまえ。

アキラ君:あーすごい!TOP10なんだ!すごいんですね、Wesleyan大学。

寧々:…ふう。

アキラ君:そんな、全身で脱力しないでくださいよ!

寧々:……リベラルアーツ大学と知名度と将来の展望については、また別の機会にじっくり語ることにして、ここではUS News Rankingの総合大学及びリベラルアーツ大学のそれぞれのベスト35くらいを「名門大学」と超ざっくりに位置づけるね。

アキラ君:そんなにたくさんあるんですか!?

寧々:まあ脱線すると、それが米大学のいいところでさ、日本と違って超良い大学の数がすごく多い。だから、まあたまに聴く話だけど、学部とか教育の中身は他の大学に興味津々なのに、成績がすごくいいから「東大行かないともったいない!」って仕方なく東大行くケースはあまりないよ。ハーバード受かったって蹴る人たくさんいるし。

アキラ君:は、ハーバード蹴る人いるんですか?

寧々:うじゃうじゃいるし、タイガー・マザーでもない限りもったいないとは言わない。つまり、超良い大学がたくさんある状態ってのは、自分の価値観や個性に合った大学を割りと少ないノイズで決められるってことなんだ。まあ、奨学金の有無で決める人もいるが。よし、奨学金に話を戻そう。

アキラ君:フリーマン奨学金でしたね。Wesleyan大学がすごく面白そうなのはウェブサイトでちゃんと確認しました!ここの大学の学費が全免になるんですね!

寧々:生活費とか寮費はかかるけどね。けれど、Wesleyan大学はリベラルアーツ大学なので、グルー基金との併用ができる。つまり…

アキラ君:なんと!学費が300万ちょい全免除で、残りの寮費とか食費が200万ちょいだから、グルーを高位合格できたら、ほとんど全部免除ってことに…!!

寧々:はい、正解。狭き門と言えなくもないけれど、いい話だろう?

アキラ君:なんだか希望が湧いてきました!僕みたいな、特に派手な経歴がない高校生でも、合格してほぼお金をかけずにアメリカの名門大学に行ける可能性はあるんですよね?

寧々:そりゃあるさ。笑。派手な経歴はあったほうが有利には違いないが、君は同年代の中では十分に優秀だし、学校内で責任ある立場にもいたことがあるし、可能性は十分ある。これもまた別の回で話そう。むしろ、前回話した点数の問題をクリアすれば、道はだいぶ拓けるんじゃないかと。

アキラ君:なるほど。

寧々:まあでも、フリーマン奨学金の合格者は1年に1人なので、もっと汎用性のある話をしようか。グルー基金の隠れた利益について。

アキラ君:お金がもらえるだけじゃなくて?

寧々:だけじゃなくて、この基金は戦後からずーと優秀な日本の学生を米リベラルアーツ大学に送り続けた実績があるので、当然学校からの信頼は厚い。なので、例えお金がもらえない合格者になったとしても(毎年10人-20人程度いる)、希望のリベラルアーツ大学への合格率は上がるし、Financial Aidを貰える可能性が高くなるんだ。グルーの推薦があれば、学費を減免すると手放しで宣言している学校もあるくらいにね。

アキラ君:それはすごいですね!つまり、その中に入ればリベラルアーツ大学への合格率や奨学金貰い率が一気に高まる、と。

寧々:そゆこと。10年前の話で恐縮だけど、当時最終選考まで残った子も、1次は通過したけれど2次は不合格だった子も、名門リベラルアーツ大学への進学を果たしている。何人かはFinancial Aidつきで。調べてみたら近年でもその傾向は変わっていないらしい。

大体、リベラルアーツ大学は、海外からの学生にも太っ腹にFinancial Aidを出す傾向が強い。結論から言うと教育のレベルや学部生のレベルも、Ivy Leagueに決して遜色ないし、知名度がないのも日本の茶の間だけで、グローバル就活マーケットでは引く手あまた。なので、海外に出たいけれどお金に自信がない優秀な中高生には強くお勧めします(真顔)。

アキラ君:な、なるほど。これはグルー基金、絶対受けなきゃですね!リベラルアーツのことといい、もっと調べなきゃな。

寧々:そこはまた詳しく話すけど、自分のやりたいことも固まってなくて、学校の名前も知らん人は、まずUS News Rankingをぼうっと眺めればいいんじゃないのかな。知識はつくよ、最低でも。

アキラ君:はい!なんか楽しいですね、これ。学校がたくさんあるからどれかに行けるかなーなんて思ったりして。

寧々:そうやってニヤニヤする時間、大事よ。中学受験経験者ならわかるけど、あの学校偏差値分布表眺めるのと同じ感覚。情報量はだいぶ違うけど。

アキラ君:あれ、でもロックがかかってて見えない情報もあるや。

寧々:各大学の合格者SATの点数とか、そういうのは有料ね。あと、「どの大学がどの程度海外の学生にFinancial Aidを出しているか」が公開されているので、参考にしよう。29ドルの一回払いだし。総合大学にたまにあることだが、海外の学生には決してFinancial Aidを出さない学校もあり、そういうところは受けるだけ無駄だから下調べは重要だよね。

あ、グルーの補足だけれど、書類段階で足を切られぬよう、前回言った試験の点数は完璧じゃなくてもいいから書類締め切りの9月までには揃えようね。

アキラ君:はい!頑張ります!あ、そうだ!あと、コミュニティ・カレッジってあるじゃないですか?あれはすごく学費が安くて、年8万円のもあったり、UCLAとかに編入できるって聴いたんですけど、そっちはどうですか?

寧々:そっちはねー。うーん。

アキラ君:え、駄目ですかね?

寧々:駄目じゃない。決して駄目じゃない。ドラマチックな成功例もあるし。
けど、このコミュニティ・カレッジ(以下、コミカレ)→UCルートって安くてお得に見えて、リスクが結構あるんだよな。

アキラ君:え、どんなですか?コミカレは学費も安いし、勉强も日本で優秀なら難しくないし、そこでいい成績を取れたら、UCに限らずその州のいい州立大学に編入できるって、結構いい話に聞こえるんですが。

寧々:そうには違いないのだが、おおまかにいうとリスクが3つくらいある。お金の話からは脱線になるけど手早く済ませるね。私が考える、コミカレ→名門州立のリスクは、以下。
1. お金
2. QOL
3. 合格率

アキラ君:お金は、安いんじゃないんですか?最初の2年、コミカレだし。

寧々:確かにコミカレの学費は安い。が、後半の2年は海外生として州外率で学費払わなきゃだよ?

アキラ君:州外?

寧々:そう。州立大学は州民の税金で成り立っているので、当然州民が優遇される。学費も安くなる。だから、優秀かつ裕福でないアメリカの学生は多くがトップの州立大学に行くのだが、州外から来る学生となると話は違う。UCバークレーは例えば、非州民の学生(親がCalifornia納税者でない学生)の学費に220万円近く上乗せしている。

アキラ君:う、それは…!日本の私立と国立以上に違うじゃないですか。同じ学校に通うのに!

寧々:まあ、親たちは税金を払っているからフェアだって意見もある。なので、色々加算すると、後半2年にかかる学費や諸経費が私立大学のそれと変わらないケースも多々あり、また間違ってもFinancial Aidは出ないので(当然納税者の学生に回される)、その2年分の学費はがっつりかかる。

アキラ君:グルーが取れたり、リベラルアーツ大学でFinancial Aidもらったりした方が資金的にいい、ってこともあるんですね。

寧々:そういうこと。2と3については別の回で詳しく行きたいけど、端的に言えば、純ジャパが渡米前勉强してない状態で行って本当に合格する可能性が高くないってことと、価値観の問題だけど、2年間のカレッジライフをコミカレで過ごすことは熟慮が必要だということをここではいっとく。(例えばどうしてもUCバークレー/UCLAに行きたいけど時間・金が足りず、他の大学は行きたくない!とか)。
当然、上手く行けばすごくいいオプションではあるけれどね。

アキラ君:ふむ。色々考えないとですね。けど、なんだか希望が湧いてきました。お金で諦めなくてもアメリカの名門大学に行けるんですね!
本日も最高に濃ゆい話をありがとうございます!なんだか情報がたくさんありすぎて目が回るのですが…。

寧々:そんなあなたのために!本日の情報をざっくりまとめたピラミッド型の早見表を作ってみたよ。

お金で諦めんなってのはその通りで、よくアメリカの大学は学費が目玉が飛び出るほど高いから無理って最初から投げ出す声(たまに何故か「こっちに資金がないのわかってて薦めるなんて不謹慎だゴルァ」とか逆切れる声も)を聴くし、それも一部では事実には違いないけれど、決して挑戦すらしない理由にはならないと思うのよね。
なので、これでもか!とわかり易さを追求しました。どうぞご参考に。

けれど、この図がカバーしきれない特殊な情報やシチュエーションも勿論あるので、「うちはどうなんだ!?」と気になる場合はコメント欄からお問い合わせ下さい。

米大学学資相談チャート

講演のお知らせ: 第四回TOEFLアライアンス大会@大阪府(9/28-29)

alliance


TOEFL教育が今最も熱い大阪府で、明日から出来る世界基準人材の作り方を語ってきます。
ご興味の有る方は是非ご参加下さい!!

URLはこちら:http://www.toefl-ibt.jp/alliance/event_1409/index.html
(なんと日本のTOEFL公式サイト♥)

米名門大学へ進学したいけれど情報がない高校生と白川寧々の対談 試験編


私のことをご存知の方はもう聞き飽きている頃でしょうが、私は優秀な高校生の米国大学進学を大いに推奨しております。そんな私がネイティブ脳を開いていると、よく聞こえてくるのは、

「興味はすごくあるけれど、『何を知らないか知らない』状態で、どうしたらいいかわからない」

という、全国の悩める高校生の声。
確かに、帰国子女でもなく高校まで日本の現地校で学んできた学生たちは、いくら優秀でも情報が入ってこないことが珍しくない。そんな悩める高校生の一人である、横浜市の名門進学校に通うアキラ君が勇敢にも質問をぶつけてきたので、全国の情報過少に苦しむ高校生のために、【米名門大学ストレート進学 疑問丸ごと対談 試験編】を書いてみました。
「どうしていいかわかんない」
とか思っている学生や親御さん、必見です。
(以下、対談)

アキラ君:寧々さん!今日はさっそく、アメリカの良い大学に進学するのに必要な試験と、その試験の仕組みや課される教科、必要な点数を教えて下さい。

寧々:ふーん、やっぱり日本の学生だけあって、試験が気になるか…。

アキラ君: え、駄目ですか?そりゃ大学入試だから、大事じゃないんですか?(汗)

寧々:大事じゃないとはもちろん言わない。が、アメリカの名門大学の合否は試験だけじゃ決まらないのよ、そもそも。一般的に、共通試験、学校の成績、課外活動、の三本柱が大事だって覚えておいてね、まず。

アキラ君:は、はい。じゃ1/3くらいの割合で重要なんですね!

寧々:うーぬ、厳密には違うけれど、ここはまず「足切り」くらいに考えて先に進もうか。
アメリカの大学入学審査を受けるには、いくつかの世界共通試験の点数が要求されます。
学校によって、要求されない試験とかもあったりするけど、君はもし機会があればハーバードとかも視野に入れてるタイプだよね?

アキラ君:えーと、僕じゃ自信ないですけど…。

寧々:謙虚さは一文の得にもならんぞ。興味あるなら素直に言えい。

アキラ君:はい!ハーバードに興味あります!

寧々:よしよし。視野に入れる勇気がなきゃそれこそ永遠に届かないもんな。
さて、ハーバードや多くの有名大学は、日本を含む海外から受験する学生に以下の試験の点数を要求している。
1. TOEFL 
2. SAT またはACT
3. SAT II を2科目

アキラ君:TOEFLは知ってます!ほかは…最近たまに見かける字面ですね。

寧々:まず慌てずにTOEFLからいこう。これは最近日本でも注目されてきてるよね(やっと)。英語圏で高校を出ていない人は全員要求される、非常にアカデミックな英語の試験です。英語の四技能(読む聴く書く話す)がすべて、時には同時に要求され、英語圏のアカデミックな環境で活躍できるか?ということをシビアに測られるキツめの試験で、日本の従来の英語教育の枠組みでどんなに英語が得意でもまず太刀打ちできません。

アキラ君:最初からキツイっすね…自信なくしてきた。

寧々:でも、簡単だよ。

アキラ君:え?そうなんですか?

寧々:うん。この「簡単」ってのには2つの意味がある。1番目の意味としては、TOEFLが課されるのは英語を母語としない学生だけだが、次に羅列されているSATやACTはアメリカ人の学生もひいこら言いながら受ける試験で、それと比べたら大いに簡単だってこと。

アキラ:ひぃぃぃー!

寧々:2番目の意味はね…アキラ君、君は日本の同年代の中でも優秀なほうだと自覚しているだろう?

アキラ君:当然僕より優秀なのはたくさんいますけれど、全国模試でも100~200番台に入ったりするし、進学校の校内の順位でも学年で30番を割ったことはないので、悪くない方だと思います。

寧々:よく言った。2番目の「簡単」ってのは、それくらい優秀な子なら、自分を信じて正しく頑張れば、割とすぐ結果が出せる試験だってことだ。今日本人の高校生にとってこれが難しいのは、学校で教えている内容が勝手に低レベルに設定されているからであって、能力がないからではない。

アキラ君:じゃあ、頑張れば僕でもすぐにTOEFL iBTで100点取れますか?

寧々:すぐに、かどうかは頑張り方次第だけど、だいたい3ヶ月くらい集中してやれば出来るよ。ただ、TOEFLは有名大学で活躍するための第一関門に過ぎないからな。満点取ろうが何しようが、アメリカではそれだけじゃ苦労することも覚えておこう(私がそうだったし)

アキラ君:寧々さん、ほぼ満点だったのに苦労したんですよね。

寧々:そういうこと。それはいいや。まず、ランキングで大学を語るのは好かないけれど便宜上仕方ないのでランキングを使うと、USNews Best College Rankingで上位30番くらいの大学はほぼTOEFLで100点を足切りにしてくる可能性があるから、行ってから苦労しないためにも足切りされないためにも、最低100点は取ろう。そして、別に120点取ったって有利にはならないのでそこでやめよう。

アキラ君:了解です。でも、TOEFLはただの第一関門なんですよね?他にもSATとかACTとか必要だと…

寧々:そうそう。TOEFL終わってからが大変なのよ。SATもACTも、アメリカの大学入学適性試験で、TOEFLと同じく「登録してお金払って試験センターで試験受けて一番良い点数を提出する」形式ね。

アキラ君:日本の受験みたいに一発勝負じゃなくて、たくさんチャンスがあるのがいいですね!

寧々:そうやって油断すると、試験ばっかり受ける蟻地獄にハマるから気をつけな。

アキラ君:…はい、すんません。

寧々:いや、マジでお金も精神力も消耗するから少ない回数で終わりにする!って気概が大事だってことさ。
さて、まずSATとACTについて解説しよう。
SATもACTも、大学適性試験というだけあって、日本の大学入試みたいに科目の知識というよりは計数、論理的思考、頭の回転、読解力、文章力など基本的な能力を問われる。IQテストみたい、と誰かが言っていた気がするけど当たらずとも遠からずだな。
まずSATはVerbalとMathの2科目しかない(2016年からWritingがオプショナルになった)。

アキラ君:国語と算数ですかね?

寧々:ずばり、そういうことだ。まず、何も聞かずにMath(数学)の問題を見てみよう。

アキラ君:なにこれ、たまに英語の単語わからないですけど、楽勝じゃないっすか!小学生の問題みたい。

寧々:だから言ったろ。日本の学生は世界的に見ても優秀なんだって。はい、Mathはクリアね。英語の単語はちゃんと覚えようね。ちょっと自信ついた?

アキラ君:はい!(にやにや)

寧々:ニヤニヤしている暇があったら、Verbalを見てみよう。

アキラ君:…げ、単語が全くわかりません…。TOEFLとかと比べても鬼じゃないですかこれ?

寧々:その通り。SATのVerbalは必要とされる単語の量が半端ないのである。高校2年生からTOEFLを始めてひいこら言っているようでは半分も解き終わらないだろう。例えて言うなら、日本の大学入試の2次試験の現代文ほど難しい。文章のレベルもTOEFLと違って優しくないし。
けど、忘れないで欲しいのは、これはアメリカ人だってひいこら言いながら受けている試験だということよ。日本人らしさアピール(?)でMathを満点にして、Verbalはまあ…なんとか恥ずかしくない点数を取れば希望はあるわよ。
ハーバードだって、SATの点数が高い順に合格にするわけじゃないし。

アキラ君:恥ずかしくない点数って、どれくらいなんでしょうか?

寧々:VerbalもMathも800点満点で合計1600点なんだけど、Mathが800点なのは前提として、Verbalは…滅多なこと言えないけど、550点―600点くらい取れればいいかな?あくまで足切りだから、本当に滅多なことは言えないけれど、合計で1300-1400点台があれば米国内では「そこそこ優秀な子」と認識されるわけよ。1500点台なら、トップスクール候補、みたいな。
いくら点数が必要か私がやたら口ごもる理由は、ハーバードとか名門大学が、毎年SAT満点者をこんなに不合格にしてやったぜ!みたいなことをやたら自慢するから。
かといって、Verbal400点台では授業に付いていけるかが心配。なので、一応550点とか言っておくね。
夫はSATもACTも満点だったのにプリンストン不合格で悔しがってたわ。

アキラ君:本当に、点数では決まらないんですね。

寧々:最初に言ったようにね。さて、ACTを忘れていたわ。ACTは、Reading, English, Math, Scienceの4科目があって、SATのVerbalに当たる部分はReadingね。Englishは文法で、暗記して問題解けば日本人は案外負けないとこ。MathはSATより難しいけど日本人には楽勝。Scienceも知識じゃなくて科学的思考みたいなのが問われるから、TOEFLのReadingみたいなノリかな?

アキラ君:このReading、文章がたくさんあって制限時間きつそうだけど、単語が結構マシですね。

寧々:そうなのよ。そして、SATでは難しい単語がたくさん出るVerbalが配点の半分なのに対し、ACTでは1/4くらいに減る。読むスピードとか解答力とか読解力は問われるけど、一般的に英語を母語としない子にはACTのほうがお勧め出来るかも。

アキラ君:僕もそのほうがイケそうな気がします。これも800点満点ですか?

寧々:いや、これがなんと36点満点なのよ(笑)。

アキラ君:だいぶ目減りしましたね…。

寧々:ね、紛らわしいよね。100点にすればいいのに。これも、目指すところは30点台だけど、26点程度でSATの1300点台とみなされるらしい。以上で、2番目の試験の解説終了。

アキラ君:次はSAT II…またSATですか?

寧々:次は結構楽勝よ。SATとACTでヤマ越えたと思って頂戴。

アキラ君:え、ただでさえSAT大変なのに、SAT IIってもっと最強そうなんですけど!

寧々:気持ちはわかるが落ち着きたまえ。SAT IIはIQテストじゃなくて科目テストなのよ。そもそも要求してくる大学がトップ校に限るんだけど、日本人はSATのVerbalの点数が低いからこれで高得点取って、「私勉强できるよ!」アピールするのがお勧め。

アキラ君:僕でも高得点取れるんですか?

寧々:受ける科目を間違えなければね。一般的に、2つの科目テストが要求されるけど、日本人はMath I, Math II, Chemistry, Physics, Biology, World Historyから好きなのを2つ選べばOK。

アキラ君:え、Mathを2つ選んでもいいんですか?

寧々:ダメだって言ってくる学校もあるから、生物、化学、物理の中からひとつ選ぼう。世界史は覚えるタームが多くて難しいけど人によっては理科よりいいかもしれない。

アキラ君:おや、数学が三角関数とか入って専門的になったけど、やっぱし日本に比べれば簡単ですね。物理も化学も生物も、理系で国立とか受ける予定なら、専門用語さえ覚えれば楽勝だわ、これ。

寧々:だしょー。私も生物で受けたけど、既に持っている知識を英語に置き換えるだけで、ひねった問題は何一つ出ないから難しくないよ。はい、SAT IIは解決でOK?

アキラ君:OKです!でもこれ、やっぱり山積みになると大変そうなんですけど、いつくらいからどれくらい勉强したらいいんでしょうか?やっぱり塾とか行くべきですか?

寧々:目安としては、高2の終わり(3月)までにTOEFL100点取得を目指そう。それからが大変だから。けれど、万が一TOEFLのスコアが足りない場合、高3時点で、えいやっとSAT IIに移行すること。英語で何かを学ぶという感覚を得られるし、イイ点数を取れたら自信もつく。それからACTかSATをやって、最後にTOEFLに戻れば楽勝…というのは私が辿ったルートだけど…。

アキラ君:それで満点近くとれたんですね…。

寧々:けど、TOEFLはスピーキングなどもあるのでそこまで放置しないほうがいい人もいる。全体的にいうと、SAT IIとTOEFLを夏の終わりまでにクリアすれば十分余裕が出来るよ。

アキラ君:クリア出来なかったら間に合わないんですか?

寧々:そんなことはないけど、本来頑張るべき方向性(エッセイや課外活動や学校調べ)などに集中できずに地獄を見ることになるから、なるべく夏までに試験はおしまいにしよう。

アキラ君:あくまでも試験で良い点数を取るのは合格の必要条件だけど十分条件じゃないんですね。

寧々:懐かしいタームを使うな。実にそういうことだ。あ、塾だけど、今の日本のアメリカ大学受験産業はまだ黎明期だから、行くなとは言わないけれど、なんかお金取って終わりみたいなとこも多いかな。10年前はそれこそトフルゼミナールとか老舗を除けば詐欺っぽいところだけだった。それより、いくつかあるアメリカ発のオンライン講座の受講をお勧めする。$29ドルくらいで、練習問題と、アメリカ人プロ教師の講義ビデオ(この道ン十年みたいなベテランの)と、自分の苦手なところなどが見える化されるソフトウェアとかが手に入るし。

アキラ君:それはだいぶ安いな。この前みた塾って年100万くらいかかるのに…。

寧々:ぶっちゃけた話、試験一発勝負の日本国内受験の感覚でアメリカ名門大学を受験するのはちょっと違うんだよな。そういうコストがかかる塾の付加価値って、今私が君に語っていることとか、ようは普通の日本人がほとんど知らないアメリカ名門大学受験の内情を把握した上で個々人にあった対策をすること、とかだと思うし、実際ハーバードクラスの大学が欲しい人材って、最低限の情報さえあれば、そういうことが自力でやれるタイプの人間だと勝手に私は思っている。
なので、これを読んでいる、「我こそは塾なんぞに金を落とさず自力でやるぞ!」と思う骨気のある高校生は私にメッセージ下さい。

アキラ君:寧々さんはネイティブ脳の延長で塾とか開かないんですか?

寧々:もちろん、開くことも視野に入れているよ!けど、それは日本の大学の受験予備校みたいなのではなく、もっと総合的な、要するに情報を与えて勉强の仕方を教えて、受講生がお互いに刺激しあって自助努力を促し、最終的には世界で活躍できる子が巣立つようなコミュニティをイメージしてるかな。もちろん日本に永住するつもりはないのでオンラインで。

アキラ君:それ、すごく楽しそうですけど、寧々さんは日本に帰ってこないのかあ(悲しそうな顔)

寧々:も、もちろん3ヶ月に1回くらいは帰ってくるし、いつでもオンラインで話しかけてもいいからな!

アキラ君:(( ̄― ̄)ニヤリ それにしても、今日はありがとうございました!試験の仕組みがだいぶわかってきました!なんか寧々さんのような方のバックアップがあれば、日本生まれ日本育ちの僕がハーバードクラスの米大学に進学するのも夢じゃないような気が…これって自信過剰ですかね?

寧々:全然そんなことないよ!むしろ、成功実例はたくさんあるし、優秀な日本の中高生が米名門大学を目指すのは、どんどん普通の選択肢になりつつある。なんていうか、次の回の大学選びのあたりで解説するけど、ハーバード大学自体は海外生が殺到して合格率5%を切っていて正直「こうすれば受かる」なんて誰も堂々とは言えない状況だかれども、「ハーバードクラス」の大学ならば、全然問題はない。ドメドメの君みたいな子にこそ、挑戦してほしいと思っている。

具体的に勉強法を教えて欲しいよ!というやる気と勇気のある方はFacebookで私にメッセージ下さい。

田村耕太郎さんとの対談記事が日経ビジネスに掲載されました♥

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記事全文はこちらから。→MIT発の「ネイティブ脳」で日本人の未来を変えたい!

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ほのぼの最終学期スタート・・・どころじゃない件。

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お外は相変わらずドカ雪。

最終学期なんだが、微妙にまだスケジュールが確定しないとこ。そう、授業の内容を読んでみるのと実際行ってみるのではだいぶ違うのだ。

その中で、割りと面白いのが、実業家/起業家でBill AuletとNew Enterpriseを一緒に教えているHoward Anderson氏の肝いりのTech Sales. セールス、つまりは営業のお仕事なんだが、特に商品ができているスタートアップがどうやって大企業に営業するのか、色んな面からかなり実践的に論じていて面白い。曰く、営業とは相手の「Heart, Brain, and Wallet」を見極めて戦略を立てるべし、なんだそうだ。

参考になりすぎる。興味ある人がいたら、図解します。
(そう、ネイティブ脳4.0のように!!)

営業職人は、相手の立場に立って自分の行動や言動を戦略的にコントロールする。が、これは頭でわかっていてもなかなか実行が難しい。元天才ピアニスト、今社長の友達はステージ経験が長いせいか、これが息を吸って吐くようにできる。

「ようは、ステージから場をコントロールするってことだから。人前に立つと、嫌でも色んなエネルギーを投げつけられる。プロ時代の私も、投資家の前でプレゼンする私も、その観られているエネルギーを受け取って吸収して、そっから自分でもよくわからないステージ版の自己を降ろす」のだという。

神がかり。けど、それをいろんな場で応用できるのは、卓越した自己と他者とその関係性を本当に客観的に観察して理解して考えて行動すると、言うのは簡単なのにやるのは非常に難しい技術を自然に柔軟に会得しているからだ。

これを聞いた瞬間、絶対プログラムに応用しよう!っと決意する。ここまでひとつのことに頭がいっぱいなのは、たぶん生まれて初めてだ。教育を志してから、ちょうど今頃で1周年。

他にもWeb 3.0とか、起業ジレンマとか、法律の授業を楽しく取っているのだが、実は作りたい教材とか作るべきカリキュラムでそれどころではない件・・・。

楽しいからいいんだけどね。

近況&更新&改装?

I am back!!

And Happy New Year!


皆様、お久しぶりでございます。旧正月、あけおめです!

この前から通算で1年近くぶりの更新になっちゃいますが、実にいろんなことがありました。
もともとは、MITで得られる素敵インプットを消化するアウトプットを出すために始めたブログで、結構いろんな方に読んでいただいて嬉しかったのですが、
教育事業に目覚めてからアウトプットだらけの日々を過ごすことになり、バランス的に、アウトプットのエネルギーは全部本業に費やされ、ここは廃墟状態に・・・。
楽しみにしていてくださっていた方々、申し訳ない。

この1年にあったことをかいつまんで羅列すると、

1. 結婚しました。しばらくは遠距離結婚ですが、卒業したら偏食夫とともに、サンフランシスコに住む予定です!

Pic-26

2. 日本で『ネイティブ脳』という事業を立ち上げました。

日本の英語教育を社会問題として解決するためにMIT Sloan Social Impact Fundから公認や助成を受けたり、ハバタク社・講談社Rikejoにプロデュースしてもらったり、TOEFL教育に力を入れる公立の学校さんたちと組んだり、この事業でいくと決意した瞬間から(ここらはまた詳しく話しますw)、色んな物が光速で転がり始めて非常に楽しいです。

どういう事業かは、これからちゃんと説明するけど取り急ぎなので、こっからどうぞ→http://blog.habataku.co.jp/2013/07/mit.html

ビデオはこんな感じ。100%わたくしの手製です。まさか私がお絵描きで価値を創出する日がくるとは・・・!人生ってわからないよね。

これからも、作っていかなきゃいけない教材が沢山あったり、書いていかなきゃいけないことが山ほどあったりするのですが、定期的にブログも更新せねば!とも思いまして。

その際には本名や社名も晒したりしなきゃなのでタイトルちゃんと考えないとな。『ねねィティブ脳みその中身ブロ』とかでいい?(ふざけすぎか)

ではでは、MIT最終学期の初日に戻ります。

憎しみから始まる社会起業のススメ


そう、愛からでも勇気からでも希望からでもなく。

現在取っている楽しい授業のひとつに、「社会起業のススメ」というプロジェクトベースのものがあるんだが、そこで私の米教育格差是正に営利企業のサービスモデルを持ち込みたいという案をピッチしたところ、意外と教授受けがよく、「これは有望なのでぜひ頑張ってやってみてほしい」とのこと。貧しいために(といっても明日の食事に困るような貧しさではたぶんない)かなり劣悪な学校教育環境から脱出できず、親も教育に関心があるのにオプションがない状態。劣悪な公立学校では生徒のほとんどが学年より2-3年学力で遅れを取っている状態。それも、本来の知力に関わらず。その格差を是正するためにKIPPやTFAが頑張っているけれど、明確なソリューションは提示できていない状態なのだ。

親からすれば、KIPPのようなチャータースクールは倍率が5-10倍の抽選をくぐり抜けなければ入れないし、私立は総じて年間200万円ほどするので全く払える見込みが無い。住む地域を変えるという選択肢も、貧しい都市生活者にありがちな、ギリギリの雇用状態では難しい。このまま子供を公立に入れたままにしても、最悪で卒業率が10%の高校に行かざるを得なくなり、良い教育を受け大学へ行く機会は絶望的となる。そして、所得格差が固定される。親がどんなに頑張っても、妙なプライシングと硬直した需要過多なシステムのせいで、全て徒労に終わる。

この腹立たしい状態にソリューションをとまあ、現在パートナー集めたり試行錯誤したりしているところなんだが、「カスタマーの定義とビジネスの理由が明確でいいね」とふとした拍子でクラスメイトのK氏に言われた。彼は私と違ってガチの起業経験者で、韓国エリートがアフリカビジネスマンに華麗に転身、現在進行形でナイジェリアにスタートアップ会社を持つ。K氏はというと、「事業に『社会のために』みたいなレッテルをつけたいんだが、どうも上手いこといかない。どうやら僕は発想が社会起業とか向いていないのかもしれないんだな」とぼやいていた。

「そんなことはないと思うが、とりあえず超そういうことに関心がある人と組んだら自然とその回路をビジネスに組み入れられるんじゃないのかな?」

「うん、同じ事を他のVCのやつらに何度か言われたんだけど、でも僕自身がそういう考え方を身につけたいんだよね。無理かな?」

「そうねえ」ちょっと考えて、私は気づいたのだ。「ああ、それはもしかして善意とか同情とか博愛とかの立場から出発してるからちょっと自分でもうそ臭く感じてるんじゃない?」

「そう!それなんだよ」とK氏。そこらへんぎこちないって自分でも思うんだよ」

「それは出発点がソフトすぎるからよ」私は今腑に落ちたばかりのことを口に出した。「私は例えば、教育事業を通して選択肢がない状態の親子をなんとかしたい。けれど、その出発点は決して綺麗な感情じゃない。私は、心の底からどす黒いレベルに理不尽な教員とか劣悪な教育が憎い。それこそ子供の頃からそういうのに煮え湯を飲まされたことが何度かあり、親が進学塾に入れてくれたから自由と素晴らしい中高時代が手に入ったけど、その選択肢がうちの両親になかったら、と思うと、公立の抑圧的なシステムに対する怒りや憎しみが今でもいくらでも湧いてくる。アメリカの親御さんの、この「選択肢がない」という絶望がありありと想像できる。だから、私を今駆り立てているのは自己犠牲精神なんぞではなく、純粋な怒りと憎しみと少々の破壊欲なのよ。

なので、K氏もさ、ちょっと今までの人生振り返ってみて、世の中の理不尽のせいであなたの中で最も強く印象に残った負の感情を掘り返したら、すごい社会起業のモチベにつながるかもよ?

と語ってしまったんだが、K氏はものすごく納得して帰っていった。ちょっと今夜自分の人生について考えてみる!と言い残しw

起業のモチベが夢や希望でなく、夢や希望が理不尽に破壊されていることに対する憎しみと破壊欲である、と定義するほうが、どうしても自分にはしっくりくる。とか考えているそばから、思わぬ方向から同じ考えを持つ人に出会ったり、起業を決めた途端から人生の動くペースが速くて楽しい。けど、今までのレール人生のぬるま湯のせいか、ちょっと心が付いて行くのにぜえぜえ状態なので、そこは調整剃る必要がありそうなのが、当面の課題。

頑張ります。

ブリザードも明けまして


旧正月と数十年ぶり規模の豪雪NEMOで盛り沢山な週末。

家の前がこのような状態なので↓実に48時間以上外に出られなかった。友達ともネットの上でしか会えず、仲のいい子の誕生日パーティにも参加できず。

が、ここで外に出られないよおおと鬱になるのも芸がない。ちょっと思い立って今朝、バスローブ、パジャマ、長靴姿で裏庭の階段から50センチくらい積もった雪をかき分けて、誰ひとり触れた形跡のない処女雪の上にダイブ。日差しは暖かく、空は深く青く、さらっさらの雪はそこらで売っている低反発マットレスより気持ちよくバスローブ一枚の私を包み込んだ。着衣露天雪風呂とでもいうべきこの状況、寒くはなくものすごく気持ちがいい。

放っておいたら寝てしまいそうなので、しばらく極楽を味わった後に立ち上がろうとしたのだが、これが思ったより大変。後先考えずにダイブしたのはまずかったか。もがきながら私の人型にくぼみができた雪の形を壊しつつなんとか立ち上がり、もときた道を這い登り、雪だらけで呆れ顔の猫たちに向かい入れられたのだが、気分は本当に久々に爽快であった。窓の外を見ると、私が残した人型のくぼみには、私のバスローブの格子模様がくっきり残っていて、これも爽快。

今年こそ、運動しよう。と、心に決めた旧暦新年。

でも、チキンなので、まずはヨガマットを買いに行くとこからはじめます。

授業開始。起業系の名授業を網羅する日々


アントレします宣言から約2週間。授業を選んだのはほぼ前学期の終わりなので、当然授業選びのロジックがぜんぜん違ってくる。

とりあえず、今学期取っている授業を一から教授の名台詞とともに紹介してみよう。

Social Enterprises and Innovation Andrew Wolk 教授
「これまでいくつかの社会起業をしてきたが、根源にあるものは、博愛主義で慈善家だった祖父のやり方と、ウォール街で25年辣腕を振るった父親のやり方の絶妙な融合を探そうってことだったんだ」

Global Economy and Development: China and India 黄亜生教授
「中国とインドの成長率の差は、インフラだと一般的に言われている。が、私の立場は違う。中国の成長の快進撃、真の立役者は、中華人民共和国建国から整備してきた社会資本にある。基本的教育と、女性の権利と、公衆衛生。この3つで、インドは中国に遅れを取った結果、現状があるに過ぎないのだ

How to Develop Breakthrough Products and Services Eric von Hippel 教授
「一番最初のプロトタイプは、いつもユーザー発である。企業はそれらを借りてきて改良し、大量生産しているに過ぎない。この授業ではイノベーションの民主化について扱いたい。あと、知的財産の存在も見直されるべきだと思う。あれ、ユーザーにとっては一文の得もない代物だから

Customer Analytics Michael Braun 教授
「これから君たちがどんな職業についても、データの束を渡されて、分析しろ!と言われる可能性は高い。そこで真っ先に浮かぶのは回帰分析だろうが、客の動向とか選択を予測する時、回帰分析を用いるのは最も意味が無いのである。これからの1学期、人によっては地獄の苦しみかもしれないが、終わるまでには確実に顧客行動分析のエキスパートになっているのは保証する

New Enterprises Bill Aulet 教授
これはいっぱいあるのでいくつか。
「トーマス・エジソンは電球を発明し、各家庭の使用に耐えるモデルを創りだした。諸君がトーマス・エジソンなら、投資家にどう売りつける?

「テスラはトーマス・エジソンより頭がよく、彼よりいいものを発明したのに、誰にも顧みられず、不遇のまま没した。テスラは、発明家だけれどイノベーターではなかった。彼の失敗はこの授業を取っていなかったことだ!そう、この授業はMITからテスラを出さないための授業です。

「ベンチャーキャピタルに出資させるのを前提で起業するのを応援してるわけじゃないぞ。資金調達の画期的な方法を教えようか?『客にモノやサービスを売って金を得る』という方法だ!

「起業してからというもの、前職のIBMに戻って仕事する夢を見てうなされることがしばしば。すごく大変だけど、何者にも代えがたい喜びがある。そう、子供を育てるのに近い

「MIT発のアントレの成功率わかる?5%?10%?いや、MIT卒生が起こした会社の失敗率は20%だ。20%は大成功し、60%はまあまあやってけてるくらいかな」

ほかにもとってるけど、まだ開始していないのでここまで。