今日はいろいろドラマチックだった。
まず、金曜ということでキャリア関係の話を聞くのが慣例なんだけど、組織論の教授が人生とキャリアとバランスの選択の濃い話をしてくれて、しんみりする。
そして、もうすぐ中間試験なので真面目にRecitationに出てみたり、経済の問題って意外と苦にならないなとありがたい発見をしてみたり。
そこまではよかったんだが、そっから少し、人生で久々に怒り心頭になるような出来事が起き、今やっているプロジェクトについてかなり重要な決定をしなければいけなくなった。
決断次第では、ステークホルダーを全員ハッピーにはできない、ちょっとセンシティブな決定を怒り心頭の状態でしてはいけないと思い、なんとかクールダウンを図っていたところ、思いついたのがルーク氏の存在であった。思うに、彼は浮世離れしている分、人生のプライオリティについて誰よりも周りに左右されることなく、考えることができる人物だ。何か決断をする際、わかりきっているPerspective以外のなにか大事なものを気づかせてくれる気がして、私は彼の携帯の番号を押した。
快く応じてくれたルーク氏と落ち合ったのは学校近くのベーカリー。
単刀直入に、プロジェクトとステークホルダーたちと、私の怒りについて説明し、「私はとりあえず、今の問題はプロジェクト自体を優先させると、ちょっと政治的な離れ業を使わないといけなくなる。これは正直ちょっと問題がないとは言えない気がするんだがどう思う?」と締めくくった。
が、彼の答えは明白だった。
「いや、君の本当の問題はそこじゃない。プロジェクトもステークホルダーも関係ない。君が何をしたいのか、Interestはどこなのかで100%決めるべきだ。MBAの2年間、最も貴重なリソースは時間であるということを忘れてはいけない。だから、興味が持てないと思うことに費やす時間ほど無駄なことはないんだから誰かをアンハッピーにさせたくないという義務感で何かを決めるのは結局誰のためにもならないと僕は思う」
自分自身の向き合えなかった弱さをつきつけられて、私はなぜだか、筆舌尽くしがたき爽快感を覚えた。
私は、まさにその、自分のInterestはどこなのか!?で物事を決めるのが苦手なのだ。物心ついてから今まで、ほんとに苦手なのだ。
ルーク氏は笑って、おのれの人生のストーリーを語ってくれた。
曰く、彼はもともと頭がよかった。当然だ。見ればわかる。が、行った大学はアイビーとかではなく、インディアナの小さなリベラルアーツカレッジ。ランキングも、そう上ではない。でも、それがよかったのかもしれないと、彼は語る。12歳まで、ルークはクラスで一番頭がいい子で、それが当然だと思っていた。が、彼の両親の方針で入れられた、ひと学年30人しかいない私立の中高では、知的であることがネガティブなこととされ、そんな環境に適応するために思春期はものすごく学びから遠ざかっていたんだそうだ。それで、大学は行くものと思って惰性でテキトーに受かったところに入り、そこで哲学と恋に落ちたという。それから4年、彼は米大学では難しいとされる哲学でストレートAを取ったり、授業の20%は彼の発言!みたいな状況になったり、哲学教授とがち討論しまくったりと濃い大学生活を送り、カナダの極貧神学生生活中に父親のインドアウトソーシングビジネスを引き受けるまでは哲学にどっぷり浸かっていたという。
「君が今まで、日の当たるグローバルエリートの高速道路を突っ走ってきたとしたら、僕は12、3歳の頃から高速どころか道端の茂みに突っ込んで20代後半になるまで出てこれなかったも同然なんだよ。だから読んだり書いたりはすごく好きで得意だけど、計数ではいつもいろいろ間違えるし、君みたいに定量的科目で余裕そうな人が羨ましいことがある。でも、神学生時代は収入がマイナスだったから、起業することになっても機会費用がマイナスだった。『収入ゼロでもマイナスよりはマシ』って状態で突っ込めたから、今の自由やそこそこの成功があるんだと思う。
それで、今、こんなMBAでなんか来て、また高速コースに戻ってきた懐かしい感じがするんだけど、皆才能がすごいあるのに人生すべてを高速で走ってきた人々の、失うのが怖いがゆえのキャリアチョイスがすごくもったいなく思える。主に君とか。君とか。まあジョニー氏やKIM氏もそうだけど。けれど、僕がリスクをとれたのは12歳の時から道端の茂みに突っ込んだせいなんだよね。それ言い換えると、人生すべてが高速ってのは、それ自体が結構リスクな気がしない?」
ものすごく、する。笑。
確かに周りを見渡してみると、「卒業後は絶対起業しか興味ない!」と断言しているのは、トップコンサル出身のライアン君を除けば「いや別に自分はスクールネームとか大したことないし別に他の人々に比べればスキルもないし、ただ好きなことだけやって生きていきたいから」と自虐的になるでもなく淡々と言ってる人たちで、彼らは本当にコンサルとかに興味が無い。
好きなことやって生きる。MBAは本当に何でもいいからそれを考えろと、そのためのツールは用意するからと、突きつけてくる装置である気がする。まあ3割くらいコンサルが卒業後のジョブだけど、その3年後くらいには、皆いろんなとこに枝分かれしているし。私は26歳にしてようやく、その可能性を本気であたりはじめたわけなんだけど。だから今、かなりいっぱいいっぱいになるくらい色んなことに手を伸ばしているわけなんだけど。
最後に、ルーク氏は言った。
「起業するなら、自由になりたいなら、以下のソフトスキルを身につけるべし。
ープレゼン及びパブリック・スピーキング。これは実は少数を除いて皆苦手だから練習さえすれば平気。
ー交渉力。いくらプロダクトやサービスがよくても、ネゴ力で500万のプロジェクトが簡単に100万に目減りする。絶対重要。
これからもいくらでも相談に乗るから、経済とか教えてね☆」
忘れてたけど来週からみっどタームだった・・・。
いつも楽しく拝読しております。
「人生すべてが高速ってのは、それ自体が結構リスクな気がしない?」
というセリフは日本だと有名大学→一流企業正社員というルートに乗ったはいいが、もやっとしている人にも刺さりそうだな、と思いながら読みました。
「好きなことやって生きる。MBAは本当に何でもいいからそれを考えろと、そのためのツールは用意するからと、突きつけてくる装置である気がする」
これを読んでMBAというのは費用対効果は別としても、ある意味リベラルアーツとして機能しているのかなと思いました。そう思うと俄然興味が湧いてきます。
TOKEIKUNさん、
いつも読んでいただいてありがとうございます!
そうですね、MBAに来る前は私自身、ある程度希少性があるバックグラウンドでありながらも、何らかのルートに乗って来ていて、MBAはただそのルートの一部だろうとどこかで思っておりましたが、来てみるとこんな人とは出会うし、とんでもないAssumptionでした。
たしかに、MBA自体は大学院でありながら、卒業後の進路は専門家とは程遠く、役割についてもいろんな人がいろんなこと言ってますが、これを就職予備校として使うか、ビジネスパートナー探しに使うか、効果としてはとても本人次第なんですわ。