ろじかるしんきんぐ…

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ろじかるしんきんぐ…all over the place


また諸事情でOperationのケースを孤軍奮闘する羽目になったんだが、どうしても授業で習ったこととケース内容がうまく結び付けられなくて何時間も足掻いてしまって情けない限り。経済や会計やDMDの宿題は1時間もかければ余裕で終わるのになんなんだこれは。本気でOperationとか向いてないのか自問自答していた矢先、ライアン君がやってきた。

ミーティングに1時間40分ほど遅刻した上にケースを読んできてなかった彼を怒鳴りつけようか迷ってやめたのは、ひとえに彼が目の前でケースを読む→重要ポイントを絞り出すちょっとディスカッションしてディテールを確認→ケースに活路を与えて解決に導くという一連の流れを2時間ちょっとで、しかも手慣れた感じでやってしまったからだ。私はひとり袋小路に迷い込んでいたというのに。

「どうしてそんなに頭がいいんだ君は。それとも私のCPUパワーが足らんからか?」

「いや君は脳みそのCPUパワー的に問題はないんだが、あるとすれば『考え方のクセ』かな。細部と一般論に注意を傾けすぎて抽象化することを意識してないだろ。それを意識するだけでだいぶ違うしぶっちゃけそれがコンサルだから」

一般論から抽象化された概念をロジックに則って引き出す。なるほどしっくり来るな。

言われてみればそういう考え方を私が今までしてきた経験といえば、教育とか文学とかサンホラの音楽とか、「それについて考えること」が楽しくて仕方ない分野に限られていた。仕事での頭の使い方はもっと違う感じだったし。数学は嫌いじゃないけど基本は記憶力と語学力だけで回ってるような、がちがちの文系脳だ。

このコンテクストでの抽象化とはなんぞや?哲学者や本物のコンサル業務従事者には怒られるかもしれないが、「複雑な事象を簡単な言葉(あるいはマトリックス)で説明して落とし込むこと」が卑近な説明ではないかと思う。コンサルの人々が、普段は数値化できないような事象を無理やり数値化しようとモデリングに頭を絞ったりする話もなんだか納得した。

日本では散々、『仮設思考』とか色々外資系就職では大学生もそういう本を多量に読んでたりしてするものだが、米ではそういうところはもっと表面的な訓練にとどめて(ケース面接の練習だけ、等)、大学時代やMBA時代は就活以外の好き勝手なことをやることが推奨されている。ディープな課外活動とかディープな学問とか、まあディープなスポーツとか色々。

もともとナチュラルに抽象化して考える頭を持ってる人々(例:偏食王)なら、この部分を言語化することもなく「コンサルのお仕事、毎日頭たくさん使えて楽しいな♪」って感じなんだろうけど、私のように短期的なビジネス修行だと割りきって潜り込もうとしている不逞な輩は、ライアン君のアドバイスを重く受け止めて置く必要があるなと腹落ち。

「ではどうすればいい?私は一応御社に入ってバリューを出す経験をしてみたい」

それについても、聡明な彼は非常にシンプルな答えをくれた。

「君になら別に難しくはないはず。俺も別にここは意識して鍛えたわけなので、ロジック本を読み込むことを勧める。Diamindsというのがいい」

そして、おもむろに黒板に縦に、「抽象 一般事象 細部」と書き、「抽象」と「一般事象」及び「抽象」と「細部」の間に両向き矢印を描いた。

「こういう思考の階層の上下運動を意識してするといいよ。日常的に身の回りのことでも、ニュースでも、何でも」

なるほど、筋トレみたいなものか。ライアン君には非常に感謝して、早速言われた本を購入。実はサクサク読めるのでお勧めです。

しかし、「思考レベルの上下運動」とは巧みなり。「考えるクセをつけましょう」とか言われてもピンと来ない輩にはこれくらい噛み砕いた方がいいっていうのを見透かしているかのような、ぽっと出にしては非常に練られた表現だな。

これも思えば、一般ターム(「考えること」)から、詳細かつ即行動可能な表現(「上下運動を意識しよう」)への巧みな言い換えである。前のボスにも、「常に頭のなかを言葉で埋めてみようよ」と言われたほうがしっくりきたものだが、意識してみるとだいぶ違う、というのはやってみてすぐにわかる。Actionableな表現のほうが、習慣化しやすいからだ。

社会心理学でもどっかでやったけど、「決意」を促すより「習慣」を促すほうが数百倍、結果としては楽。習慣のが行動としては短期の積み重ねだから。人の脳は非合理にできているので、短期目標がたくさんあったほうが長期目標を達成しやすい。例えば、スポーツジムに登録しても来ない人々を「健康と美しいボディのために」と説得しても無駄だったけど来る度にジムのロゴが入ったおもちゃをあげてたら(*おもちゃ自体は下らない安物)飛躍的に皆通い率が上がったとかそんな話も思い出した。

そしてこれはリーダーシップやマネジメント手法にも応用できる気がする。誰かに長期的なアドバイスをする時とか、「これについて勉強しといたほうがいいよ」ではなく「XXの本と○○の本を読み込んで、△のニュースには常に目を通し、~~について語れるようにしとけ」のほうが成果が出そうだし明らかに(短期タスクにこんな指示出してたら死ぬけど)。

(MITではビアゲームや組織論の授業などで、Coccoの歌のごとく「人は弱いものよ~そして儚いもの~♪」(あなたも含めてね☆)というメッセージを散々強調してくるので、自然とそれを許し受け入れWork aroundする術を考えるクセがこの時点でできてしまっている)

と、まあ、ケースは読んでこないしミーティングは遅刻するけど、めちゃめちゃ頭がよくて幾重にも気づきを与えてくれる上に遊びにもCostcoにも連れてってくれるライアン君はやっぱし貴重なチームメイトだと改めて認識したここ48時間でした。

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