Operationほど難しい授業ってあんまないんじゃなかろうか。デザイン上、壁にぶち当たって脳漿を絞りながらやっと頭の上の電球がピコーン!ってなるかならないかの世界な気がする。
実際、これと関係の深いビアゲーム(前の記事参照)でも、業界経験のあるなし、知能の高い低い、老若男女、人種宗教その他、あらゆる人間がめちゃくちゃ失敗していたように(PhDの集団の失敗度は実際ものすごかったらしい)、効率のいいオペレーションは直感的にはわかるようにできてないし、セオリーを学んでも実行に移す時に数々の不確定要素を考慮に入れないとすぐどこかで go wrong する可能性があるため、最初は苦手でも落ち込む必要はないのかもしれないが。
だからこそ、つまり明らかに学び慣れてないけれど、明らかに実世界にRelevantなことを必死で吸収する必要があるからこそ、一番楽しい科目でもあるのだが。
あと、教えているLevi教授も、長髪ポニーテールのスカした元軍人のおじさんなんだが、企業経験も結構あり、教授になってからも学生といっしょに病院オペレーションを劇的に改善したり、いろいろすごい。
Levi教授が学生とやった病院オペレーションプロジェクトの詳細はこちら。ちょっと長いので、MIT Sloan志望者の特にやる気のある方にお勧めですw (プロジェクトの部分は46分時点くらいではじまる)
今日は授業で、リスクマネジメントを扱ったんだが、Behavioral心理学にも触れられていて、非常に面白かった。
災害被害のリスクを管理する際、「どんな確率で工場が全部飛ぶレベルのハリケーンが起こるのか」を軸に行動を決めるのは意味が無い、という話になり、おもむろに心理テストをはじめる教授。
これは有名な話だが、例えば:
1) 今確実に3億円もらえるオプション
2) 10%の確率で32億円もらえるオプション
の二つのうち、期待値は後者のほうが高いのに、大抵の人は前者を選ぶ。一銭ももらえんよりは、確実な3億円。私でもそうするだろし。
けれど、
1) 今確実に3億円損するオプション
2) 10%の確率で32億円損するオプション
の二者なら、後者を選ぶ人のほうが多い。これも期待値通りではない。人は、何かを得るコンテクストではリスクを取りたがらず、失うコンテクストではやたらギャンブラーになる。
だからそもそもこの時点で「大災害の発生確率」x「そうなった時の損失額」という数字を作ってもその数字は何も意味を持たないのだ。
日本で直下型地震が発生する確率を専門家がいろいろ算出していて、次の4年のうち7割の確率で起こるというのも出ているけれど、だからといって日本脱出する人々が何人いるのか。
同じ要領で、2005年にニューオリンズを襲い大量の死者を出したハリケーン・カトリーナも、直前まで避難勧告が出まくってたにもかかわらずその場にとどまることを選んだ人々が多く、被害者数の多い原因のひとつとなったという。
これは、2つ目の心理テストと同じロジックだというのである。今から来るハリケーンが自分の命を奪う可能性を100%だとみなして生きる人間はあんまりいない。けれど、避難すれば確実に金銭的に損をする。避難して結局ハリケーン大したことなかったらいろいろ悔しい出費になる(被害者はそういう意味で悲しいことに貧しい人々が多かった)。悩んだ末「避難しない」を選んで甚大な被害を被った個人にとっても企業にとっても、「災害発生確率10%」という数字は何も意味を持たなかったのだ。その数字が正しくても正しくなくても。
じゃあ何を問えばいいのか。「災害被害」(例えば家屋や工場が倒壊するとか)という結果に至るまでに、数々の不確定要素(例えば建物の耐久性とか)があるけれど、それらを細分化してひとつひとつの確率である。
「このレベルの災害が来た場合、どう手を尽くしてもこの建物は持たない」「そして災害がこのレベルに達する要因の一つである湿度はちょっと危険値かもしれない」
この2つがわかっただけで、だいぶ心理的にギャンブルぽくない意思決定が出来るのではなかろうか。
実際はもっと深いんだが、眠気が限界に達したので、ごくごくさわりだけ。
あと、MBAの就活は会社から呼ばれるイベントが多すぎて実際辛いんだけど会社側も相当手を尽くして楽しんでもらえるように頑張っているのでExperience自体は結構楽しいという妙な感じになっている今日この頃。
また機会があったら書きます。おやすみなさい。
Leave a Reply